2010年12月1日水曜日

* * * 天 然 テ グ ス * * *


10年程前に、偶然手に入れた
野生の山繭蛾科の幼虫から作り出された
『 天 然 テ グ ス 』
 今ではその製法を伝承する技術者はおりません。
この貴重・稀少な歴史的名品
釣り文化遺産を
このまま葬り去るのは偲び難く
是非、このすばらしい製品
美しいフォルムと黄金色の輝きを
一人でも多くの人に
  知っていただきたい思いでの紹介です。


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道糸あるいはハリスに使われた
 太目の0.5mm前後のテグスです。
対象魚によっては複数本を撚って
 使用したと思われる物があります。
     

 非常に細い0.1ミリ23センチと12センチ
  のテグスで、ハリスに用いられたようです。


<<<  テ グ ス 小 史  >>>

 テグスとは  「 釣り糸 」 の意であり、その名称は
①  釣り人が 「手ぐすね引いて待っている 」 釣り姿から 「 テグス」 と呼称された。
 ②  山繭蛾科の 「 天蚕 (てんさん) OR 樟蚕 (くすさん) 」 から製造されるから   
   その頭文字から  「 天樟(てんくす) 」  が変化し  「  テグス 」 と呼ばれた。
等の説がありますが、定かではありません。
尚、「 人造テグス 」 が出現する前までは   
野蚕 or 山蚕の釣り糸が 「 テグス 」 と呼ばれていましたが  
「人造テグス 」 と区別するために
「 天然テグス or 本テグス 」 と呼称されるようになりました。
また、テグスは以下の如く三大別することができます。

* * *   1.天然テグス or 本テグス  * * *

過って徳島県鳴門市堂の浦は ” 天然テグス ”  の発祥地として
1950年代初頭までは繁栄を誇っておりましたが
   ナイロンの出現により人造テグスと同じ運命にたどったようです。
堂の浦が ” 天然テグス ” の発祥地として隆盛した理由は
この地の漁師が江戸時代中期  
八代将軍吉宗(1715年~1745年)の頃に中国から輸入された
薬の荷造り紐に使われていた ” 天然テグス ” を偶然に水に浸けたところ
透明になり、なおかつ柔軟性があり、更に数倍の強度を増すことを発見し
釣り糸に転用したところ非常に良く釣れた故に関心が高まり
それから製造技術の研究、習得に邁進し
   確固たる生産地位を築いたようです。
その原材料は
 品種の改良により、桑の葉を食させ
 屋内で養蚕されている 「 家 蚕 」 に対し
「 野 蚕 or 山 蚕 」 と呼称され
自然界に生息する日本在来種の
① くぬぎ・かし等の葉を主食する 「 天蚕(てんさん)」
② クリ・クス等々の葉を常食する 「 樟蚕(くすさん) 」
等の 「 山繭蛾科の蚕 」 であります。
また製造方法を簡略に述べますと
その幼虫の体内の絹糸腺を10%程度の酢酸の中で
取り出し、用途に応じ木枠に空けた
大小いくつかの小さな穴を通し、太さを整え
長さが約150cm、太さが0.1~0.5mm程度に
  両手で引き伸ばし, 乾燥させた釣り糸を
    電球型 or 乳房型 のデザインに束ねられました。
  なぜ、このような手のこったフォルムに
     束ねたのかは知りえませんが、理由があったのでしょう。 

これが電球型 OR ナスビ型
 と呼称されております。

コチラが乳房型と称されています。
非常に数が少ない珍しい型です。

* * *  ①  天   蚕  * * *
『 天蚕(てんさん) 』 から作られた
   テグスは透明な薄緑色になります。
   コチラも大変数が少ない珍品です。


天蚕の幼虫です。
背中に刺し毛があり、刺されると
点々状に腫れ上がります。
4回脱皮し、繭になる前の体長は8cm前後
太さは2cm程に成長します。
 この幼虫の絹糸腺、内臓を取り出し、作られます。
photo

                                               
                                                       鮮やかな緑色の繭です。
                                       エメラルドに輝く美しい繭,その繭から取れる糸は
                                        本当のエメラルドよりも貴重と言われています。
                           特に和服に利用され非常に高価になります。
                                photo
天蚕の成虫です。  
山林の宿に泊まりますと   
夜、外灯に集まっているのを見かけます。
目が見えないので異常な飛び方をします。
photo



* * * ②  樟  蚕  * * * 
「 樟蚕(くすさん) 」  から作られた
  テグスは透明な薄茶色になります。
          

「 樟蚕(くすさん) 」から作られた
     乳房型の物で、珍しい型です。

樟蚕の幼虫です。
背面の長い沢山の繊毛が光に反射し
キラキラと輝き  
更に側面の水色に青点の
 目玉模様、キレイデスね。

photo 


 中に蛹が入っているのが見えます。
サナギが網目状の籠で
  冬を過ごすのは珍しいですね。

樟蚕の成虫です。
幼虫の時の派手さは面影もありません。
概して ” 蛾 ” の成虫は ” 蝶 ” に比べ地味です。

この天然テグスが出現する以前は
馬の尾の長い毛
花魁の椿油で良く手入れされた
腰までの髪の毛
    麻・絹糸・木綿糸    
等々を道糸、ハリス
用途に応じ、それらを複数本
 撚って使用していたようです。

* * *   2.人 造 テ グ ス * * *

1941年頃から、高価な本テグスの代用品として
極細の絹糸を柿渋等の樹液に浸し、乾かし、撚り
ゼラチン等でコーディングした物が考案、発売され
「 天然テグス 」 より質的には劣りましたが
人造テグスは主に道糸に
天然テグスはハリスに用いられ
見事にすみ分けがなされ
低廉な価格で隆盛を極めました。
し か し
1951年、東レにより 「 ナイロン・テグス 」 が本格的に生産開始され
人造テグス製造業は衰退、廃業、或いはナイロン・テグス生産に転換し
人造テグスの生産は1952年ごろには終焉しました。

* * *  3.ナイロン・テグス * * *

1935年、米国 「 デュポン社 」 により歴史上最初の合成繊維が完成し
1941年ごろから我が国では ” 東レ ” が研究に入り
1950年前後には試験的に魚網や釣り糸を少量生産し、提供していたが
1951年に本格的な大量生産が可能になり
低廉な価格と高品質で既存のテグスを駆逐し、現在に至り
今や、天然テグスや人造テグスの生産が皆無のため
テグスと言えばナイロン等の合成繊維で製作された物を指しています。

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